[感想]The Book of Illusions /Paul Auster
The Book of Illusions
ポール・オースター著/ペーパーバック/321頁
お薦め度:★★★☆☆
救いとなる幻影を求めて――人生の危機のただ中で、生きる気力を引き起こさせてくれたある映画。主人公は、その監督の消息を追う旅へ出る。失踪して死んだと思われていた彼の意外な生涯。オースターの魅力の全てが詰め込まれた長編。オースター最高傑作!(新潮社)[邦訳:幻影の書]
さて、オースター。
私の大好きなオースター。
けれど、どうしたことだろう。世間の高い評価とは裏腹に、私はこの作品をあまり好きにはなれなかった。
飛行機事故によって妻子を失い、生きる気力すら失っていた「私」が、60年も昔に謎の失踪を遂げたまま行方知れずになっていたコメディアン Hector Mannの研究に没頭する中で、ふたたび生きる力を取り戻して行こうとする過程は、なんとなく分かる。
Hector Mannの過去の作品を紹介するシーンも、やや長すぎるきらいはあるものの、悪くはない。
それでもやはり好きになれないのは、Hector Mann その人の生き方。
再生へと向かう「私」の対極として、破滅へと向かおうとしているHector Mannの生き方が描かれるのだが、どうにも納得がいかないのだ。
とある女性と秘密のビジネスを共有するあたりは、はっきり言って理解不能。すぐに自殺しようとするあたりも、何がなんだか……。
Hector Mannの犯した罪に対する贖罪がテーマでもあると見る向きもあるようだけれども、そもそもその大前提の罪自体が、個人的にあまり納得が行っていない。
でも、これがオースターでしょ。
オースターらしさの際だった作品でしょ。
と言われれば、確かにそれはそうなのだ。そうなのだけれども、好きになれないのだ。
なぜだろう……と考えてみると。
思いつくのは、本を読んでいなかった数年の間に、私自身の好みが変化してしまったのかもしれない、ということくらい。
好き、嫌いだけで作品の感想を書くのもどうかと思うけれども、それでも結論として、好きになれない作品だった。そのひと言につきる。



