[感想]When We Were Orphans/Kazuo Ishiguro
When We Were Orphans
カズオ・イシグロ著/ペーパーバック/336頁
お薦め度:★★★☆☆
1900年代初め。上海の租界で暮らしていたクリストファー・バンクスは両親の謎の失踪により10歳で孤児となった。イギリスに戻り、成長して探偵になった彼は、日中戦争が勃発し混迷をきわめる上海へ舞い戻るが…。[邦訳:わたしたちが孤児だったころ]
なんともまぁ、ややこしい本を選んでしまった──というのが、今の率直な感想。
英文が難しいとか、ストーリーがひねくれているとか、そういうことではない。「さて、感想を書こう!」そう思ったときに、何をどう書いたらいいのか、非常に迷ってしまうのだ。
物語の細部にまで注意を払い、文学的な解釈をあれこれ並べたててみれば、それなりに体裁の整った感想が書けそうな気もするのだが、そういうのはあまり趣味ではない。あまり深いことを考えず、さらさらと物語が流れるままにまかせ、そうしてある種、直感的に感じたもののみを感想として取り上げるほうが、私の性格に似つかわしい。
けれど。
この作品に関しては、そういう直感に頼った感想を書き上げると「読み手として底が浅いなぁ」と言われそうで、何だかひじょーに不安なのだ。
辛いのだけど、やっぱり思ったままを書いてしまおう(~o~)
と、いささか前置きが長くなってしまったが、この作品、一言で言うならば、面白くない。さすがイシグロと思わされる丁寧な描写はそこここにあったが、肝心の主人公であるクリストファーは人間的魅力に欠けていて、最後の最後まで感情移入することが出来なかったし、ラストも悲劇でこそなかったが、だからといって、希望に満ち満ちたものでもなく、長いことクリストファーとともに物語の中を右往左往してきたこちらとしては、不完全燃焼の思いだけが、ぶすぶすと燻り続ける結果となってしまった。
物語終盤、クリストファーを取り巻く世界が怪しい色合いを帯びてくる。それを称して Amazon.co.jpの書評では「幻想」という言葉を使っているが、幻想というにはいささか中途半端。現実と幻想の境界線が揺らぐかのような危うさが、今ひとつ伝わってこない。というよりむしろ、小説自体が破綻してしまったかのような印象さえ受ける。けれど、こちらとしては「よもや、イシグロがそんなことをするはずかない……」という思いがあるものだから、今まさに壊れようとしているのは、クリストファー自身なんだろうか??などと、無理やり物語の中に整合性を見出そうとしつつ、先を読み進めるという、何やらおかしな読み方になってしまった。
失踪した両親を探し求め続けずにはいられなかったクリストファーの姿は、悲しくもどこか滑稽だ。そうして、私たちもまた、クリストファーと同じようにして、逃れることのできない何ものかに引きずられるようにして生きているのだと思ったら、どんよりと重たい気持ちになってしまった。
人生を深く考えたい方は、読んでみてもいいかもしれない……。



