[感想]Dandelion Wine/Ray Bradbury

239

 Dandelion Wine (Grand Master Editions)

Dandelion Wine (Grand Master Editions)
レイ・ブラッドベリ 著/マスマーケット/239頁
お薦め度:★★★☆☆

輝く夏の陽ざしのなか、12歳の少年ダグラスはそよ風にのって走る。その多感な心にきざまれる数々の不思議な事件と黄金の夢…。夏のはじめに仕込んだタンポポのお酒一壜一壜にこめられた、少年の愛と孤独と夢と成長の物語。「イメージの魔術師」ブラッドベリがおくる少年ファンタジーの永遠の名作。12歳からみんな。(C)「BOOK」データベース[邦訳:たんぽぽのお酒 (ベスト版文学のおくりもの)
たんぽぽのお酒


名作の誉れ高いこの作品から、私はいったいどれだけのことを感じとることができたのだろう。そう考えたら、ひょっとして自分の感性がとんでもなく鈍ってしまったのではなかろうかと、ちょっとした不安を感じた^^;

まあ、それはともかく。
数ページで語り尽くされるような短い物語が、連作の形で次から次へと披露される。ささっとスケッチでもしたかのような何気ない物語が、けれども妙に印象的で、読んでいると、日常の雑事にまぎれて忘れかけていた「何か」が、心の表層にぽっかりと浮かびあがって来るかのようだ。

が、この感覚がくせもの。
懐かしいというよりも、ほろ苦い……もっと言ってしまえば、ヒリヒリとした感じなのだ。どうやら子供の視点から綴られた物語の中に、純粋さを感じるよりも、残酷さを感じてしまったらしい。

もっとも印象に残った物語のひとつに、ベントレー夫人の話がある。過去の思い出をよりどころとして生きている老婆が、かつては自分も小さな女の子だったと子供たちに言うのだけれども、子供たちは信じない。おばあさんは今も昔もずっとおばあさんなのだと言う。何とかして自分にも若い頃があったのだと、子供たちに信じさせようとするベントレー夫人だったが、やがては、過去にとらわれることなく、今現在を生きていこうと決心する。そうして、子供たちに問いかけられて、今も昔も72歳と答えるベントレー夫人……。

前向きに生きようとするベントレー夫人は潔いと思うけれど、今も昔も72歳の老婆であると思われるなんて、なんだか考えただけで恐ろしい。恐ろしいのだけれども、そういう感覚ってわかるよな、とどこかで納得している自分に気づいた時には、心の底がどんよりと重くなった。

純粋ゆえに、時として残酷な子供というものが、どうやら私は苦手らしい。


Tags:

拍手する

Comments are closed.

検索

拍手ありがとうございます♪